「焼きいも」の栄養についてシリーズで書いています。今日は脂質とタンパク質の話です。
どんな野菜にも必ずある脂質
脂質というのは、その名の通り脂(あぶら)です。大豆、菜種、ゴマ、紅花、オリーブ、ココヤシ、米ぬか……と食用油の原料となる植物は沢山ありますし、オレンジなどの柑橘の油は洗剤に使われたりもします。
ただ、焼きいもから油がとれるとはちょっと想像できないですよね。
食品成分表を見ますと、焼きいもにも「脂質」がわずかに含まれていることになっています。はっきりと確かめてはいないのですが、おそらくこれはサツマイモの「細胞膜」なんじゃないかと思います。
食物繊維の話を書いた時に、「セルロース」という物質のことを書きました。これは「細胞壁」という物の細胞特有の組織を作るものなのですが、植物の細胞にはこの細胞壁の内側に「細胞膜」という組織があります。
細胞膜は動物、植物に共通して存在する、一つ一つの細胞を包む「膜」です。この細胞膜は「リン脂質」と呼ばれる物質でできています。
……まあ、「焼きいもの栄養成分」という観点では、脂質はそれほど重要じゃないので、「どんな野菜にも脂質は含まれてる」くらいの理解で良いんじゃないかなと思います。
量は少ないが重要なタンパク質
たんぱく質も、量としては少ない(目方の割合としては1.4%)のですが脂質と違い、焼きいもにとってはとても重要な成分です。
といいますのも、焼きいもが焼くと甘くなるのは、このタンパク質があるからです。
タンパク質はどんな物質?
タンパク質はアミノ酸が多数合体(正しくは「重合」(じゅうごう)といいます)してできた高分子の物質です。
……ってこれでもわからないですね。
アミノ酸というのは、炭素と酸素と窒素と水素でできている物質です。(これまでさんざん書いてきた)糖質との大きな違いは「窒素を含んでいる」ということです。
人間の体を作っているのはタンパク質です。筋肉、骨、血液、爪、毛はすべてタンパク質でできています。
また、これをお読みくださっているあなたは「遺伝子」や「DNA」あるいは「ゲノム」という言葉をご存知だと思います。
遺伝子というのはタンパク質の設計図に相当するものです。人間の細胞にはすべて個人特有の遺伝子が含まれていますが、この遺伝子の情報をもとにしてできるタンパク質が、人間の姿かたちを作っているというわけです。
なんか壮大な感じがしませんか?
なので、世界中の科学者がこのタンパク質について様々な角度から研究をしています。
実は、大学工学部の応用物理を専攻していた私の卒業論文のテーマが「タンパク質」でした。(物理系なのに)タンパク質に関係ある内容なんですが、内容について深入りはしません。
とにかく「アツい研究分野」というのは間違いありません。
酵素という特別なタンパク質
さて、サツマイモに含まれるタンパク質としては、細胞を構成する成分のほかに「β-アミラーゼ」という酵素があります。
この「β-アミラーゼ」という酵素があるおかげで、サツマイモは焼くと甘くなります。ジャガイモにはβ-アミラーゼが含まれていないため、焼いても甘くならないのです。
※あと、サツマイモには生の状態でも果糖、蔗糖が含まれているから甘いというのもあります。
この「酵素」について、次回は書く予定です。今回も最後までお読みくださいまして、ありがとうございました!