私は東京から綾町へ移住してきました。私の両親は東北出身、義父も東北、義母は関東出身ということで宮崎県はおろか九州にも親類はいません。
なので、ごくたまに会うくらいでもっぱらやり取りは手紙か電話です。それも誰かの誕生日とか、記念日くらいなものです……
ところが、昨日の夕方、久しぶりに父から電話がかかってきました。
電話は、新燃岳の噴火を心配してかけてくれたのでした。
新燃岳の噴火
2017年10月11日に宮崎と鹿児島の両県境にある霧島山の新燃岳が噴火しました。これは2011年1月28日以来、6年8か月ぶりでした。
不幸中の幸いといいますか、我が家は降灰すら感じることなく、焼きいも屋のお客様から「降ってるわよ~」と言われてちょっと洗濯物が心配なったくらいでした。(洗濯物は無事でした)
もちろん、新燃岳に近い地域では今回の噴火でも降灰があり、対応に追われている方がたくさんいらっしゃいます。お見舞い申し上げます。
父には電話で「うちは大丈夫だよ」と伝えて電話を切りました。
6年前8か月前の噴火
父が心配するのも当然というか、2011年の噴火の時は綾町でも相当な降灰、そして空振がありました。
空振というのは、噴火の音が地鳴りのような感じで伝わってくるものです。噴火した日の明け方は窓がガタガタと鳴っており、大きな風でも吹いているのかと思って外に出てみると無風で不思議に思っいました。
空振は地形の関係で感じたり感じなかったりする場所があるようです。綾町では桜島の噴火でも空振を感じるときがあります。
そして降灰ですが、当時は凄かったです。これもやはり風向きと地形の関係で、同じ綾町内でも激しいところ、そうでもないところがありました。私の住んでいた山あいの集落では数ミリの厚さで火山灰が積もりました。
迅速な対応をしたつもりが……
火山の噴火で大量の火山灰が降ってきたとき、どう対処すればよいのでしょうか?
SNS、当時はFacebookではなくmixiだったかもしれませんが、フレンドが火山灰に対する対処をまとめたサイトを紹介してくれました。
それを読むと、火山灰は重さがあり、特に雨が降ったりするとその重さで屋根がつぶれることがある、という記述があり、あわてて屋根に上って火山灰を箒ではきました。
これも幸いにして、屋根がつぶれるほど大量の火山灰は積もらなかったのですが、誤って屋根瓦を何枚か踏んで割ってしまい、瓦屋さんを呼ぶ羽目になりました。
今となっては笑い話ですが、当時は真剣でしたね。周りの人から見たら少し滑稽に映ったかもしれません。
農業への影響
当時は冬真っ最中で、私は特に何も栽培しておらず、耕耘の予定を延期した程度であまり対処に追われることはありませんでした。
ただ、ビニールハウスで栽培をしている農家さん、葉物野菜を育てている農家さんは大変でした。
ビニールハウスに火山灰が積もると、重さでつぶれる以前に、ハウス内に日光が当たらなくなります。そうすると、日照不足でどんな作物も十分に育たなくなります。当時はこの灰を吹き飛ばすために「ブロワー」という、風でごみなどを吹き飛ばす機械が結構売れたようです。
葉物を露地栽培している方は、灰がかぶると商品価値が一気に下がりますので、一度水洗いしてから直売所に出すなどされていたようです。
また、原木シイタケを栽培されている農家では、キノコに灰がかかると販売できませんし、灰のかかった原木からはキノコが出てこないという話もあって、こちらも対処が大変だったようです。なお、灰のかかった原木からもシイタケは出てきました。
ほかにも
- 火山灰は酸性で、降り積もった畑は土が酸性になり作物の生育が悪くなる
- 火山灰は粒子が細かいのでエンジンのフィルターが詰まってしまう
- 火山灰を吸い込むと呼吸器系の疾患の原因になる
という感じで、畑仕事をするのもどうかな、という感じでした。
何より、一面灰色の世界に気分が落ち込んだものです。
自然災害には抗えないが
この噴火の一か月半後に東日本大震災が発生して、宮崎はお見舞いされる側からお見舞いする側になりました。
この頃になると噴火も落ち着いており、新芽が芽生えてきて灰色の景色に色が戻ってきました。
これを見て、自然の力というのは恐ろしい一方で、また驚異的な回復を見せるものだと感じたのでした。