「焼きいも」の栄養についてシリーズで書いていきます。前回は焼きいもに含まれる「糖質(炭水化物)」というのは、どういう物質なのかという話を書きました。今回も、「糖質」について書いていきます。
形を変えるグルコース
前回は、「糖質は炭素という元素が幹の役割をして、酸素と水素が枝葉のようについて作られる」という説明をしました。そして、炭素は継ぎ手が四つあることで、物質の骨組み(または幹)にするにはとても便利な元素という説明を書きました。
さて、前回はこの「糖質」の例として「グルコース(ブドウ糖)」を絵で描きましたが、実はグルコースというのは、水に溶けている状態では、あと二種類、別の形をとります。
それがこの形です。
前回の魚の骨のような形(「鎖状構造:さじょうこうぞう」といいます)からどうするとこういう輪っか(「環状構造:かんじょうこうぞう」といいます)の形になるのか、わかりにくいと思います。
手順を簡単に書くと:
- 魚の骨の形で書いている一番左にある炭素(便宜上「1番」と番号を付けます)についている、二つの継ぎ手でつながっている酸素の継ぎ手を一つ外します。
- 右から二番目の炭素(便宜上「5番」と番号を付けます)についている酸素と水素から水素を外します。
- 「1番」の炭素で空いた継ぎ手と、「5番」の酸素をつなぎます
- 「1番」の酸素で空いた継ぎ手に、「5番」から外した水素をつなぎます
「1番」の炭素と酸素をつなぐ二つある継ぎ手のうち、どちらを外して「5番」の酸素をつなぐかで、二種類のグルコース(α:アルファとβ:ベータ)ができているというわけです。
本当にちょっとした違いなんですが、実は甘さが違うそうです。スクロース(蔗糖:しょとう。お砂糖の主成分)の甘さを100とした時、α-グルコースは74、β-グルコースは48ということだそうで、α-グルコースの方が甘いんですね。
※もしかしたら「図には『α-D-グルコース』『β-D-グルコース』と書いてあるけど、『D』って何ですか?」という疑問を持たれた方がいるかもしれません。これは、グルコースの構造にはもう3種類あることを意味しているのですが、ここでは省略します。
糖質はメチャクチャ種類が多い
ま、こんな感じで、「糖質」はできているのですが、前回も書いたように、糖質はものすごく種類が多いです。
- 「幹」となる炭素の数
- 炭素の「幹」につく酸素の「枝」と水素の「葉」のつき方
だけで、何種類も作ることができます。
グルコースと同じ「炭素の数が6個、酸素が6個、水素が12個」の組み合わせでも、フルクトース(果糖)、ガラクトースという別の糖ができます。
炭素の数も6個とは限らず、3個、4個、5個、7個のものがあります。
——※ここでちょっと脱線——
炭素と酸素と水素の組み合わせで、特別な名前がついているものがあります。
- 「酸素」と「水素」だけの組み合わせでもっともよくみられるのが「水酸基」(OH)
- グルコースの1番の炭素の部分は「アルデヒド基(または「ホルミル基」)」(COH)
- 炭素と酸素だけでできるのが「ケト基」(CO)
- グルコースの6番目の炭素部分は「ヒドロキシルメチル基」(CH2OH)
などなどあるのですが、「水酸基」だけは後で出てくるので憶えておいて、あとは忘れても(このブログでは)大丈夫です。
——脱線終わり——
そしてさらに! グルコースやフルクトースが2個、3個と合体してできる「糖」というのもあります……
こうなるともう訳が分からないというか、「何でもアリ」的な感じになっていきますが、長くなってきたので次回にします。
まとめ
- グルコース(ブドウ糖)は水の中では三種類の形に変形して溶けている
- グルコースは形の微妙な違いで甘さが変わる
- 「糖質」は滅茶苦茶種類が多い
- 「水酸基」というのは結構大事なので憶えておいてほしい
というわけで、今日もお付き合いいただき、ありがとうございました!