今日、Facebookを見ていたら、複数の方がシェアしていた記事があって目に留まりました。
インドの定番グラスを輸入販売。初めて知るB品問題への向き合い方。 フードデザイナー・モコメシ 小沢朋子さん
「B品」というキーワードがタイトルに入っていまして、「ほめる焼きいも農家」をやっている身としてはとても気になりました。農産物では、大きさ(大きすぎる・小さすぎる)や品質(簡単に言うと「見た目」)が基準から外れているものを「規格外品」とか「B品」と言ったりします。
もうちょっと細かく書くと、品質基準には「A,B,C,D」や「秀、優、良、不良」というランク付けがあって、市場価格もこのランクで変わってきます。MRTラジオで流れる「青果物市況」で値段が読み上げられるのはAランクのものです。ただ、Bランク以下の物も取引はされています。
農産物は自然の力でできますから、当然品質のばらつきがあります。害虫や病気が原因の場合が多いですが、もともと個体差というのも結構影響します。太っている人、痩せている人、背の高い人、低い人がいるのと同じです。
収穫したすべての農産物のうち、出荷に値するものの割合、またはAランクの割合を「歩留まり」といいます。私の前職である半導体業界でも「歩留まり」という言葉を使っていました。
さて、グラスのB品問題、内容はリンク先を読んでいただきたいのですが、読んだ感想として「グラスのような単純な工業製品でもB品問題があるんだな」ということと、「面白いことを考えたな」ということを思いました。
日本人は、野菜でも半導体でも、いかにして「歩留まりを上げる=B品を減らす」のかということに心血を注ぎます。また、どんなに頑張ってもある程度の確率でB品が混じりますので、B品をいかに素早く、確実に取り除いて出荷するかということも重要な経営課題です。
インド製のグラスの歩留まりは、75パーセントだそうです……いや、日本の感覚で言うとおかしなことになりますが、出荷されてきたものの75パーセントしかA品が入っていないそうなんです。
※日本で出荷された製品のうち、A品が75パーセントしか入っていなかったら「検査不十分」または「詐欺」と訴えられます。
インド人にきいたら「ノープロブレム」、つまり「使えるんだから問題ない」というんですね。確かに、使えるんだから問題はない……
では、これを売るにはどうするのか? 農産物の場合「B品」は値下げして売ります。この前の有機農業まつりで私が並べたサツマイモは(ラベルは付けませんでしたが)B品でした……売れませんでしたが。
インドのグラスはB品とラベルは付けつつ「定価」で販売してみたそうです。さらには、「いくらなら買う?」とお客様に値付けのアンケートをしてみたそうです。面白い発想だなと思いました。そして、お客様の反応もとても興味深いものでした。
売り手は当然「プロ」ですから、同じ品物を何千、何万とみています。そうするうちに自然と「厳しい目」になっていくとは思います。そうやって日本製品は品質を上げてきたわけですから。
ただその目は、厳しすぎないか? という疑問を投げたのが、この記事に書いてあるグラスでした。
実際、売れ行きまでは書かれていませんし、B品の方から売れていくということもおそらくないと思いますが、この売り方は工業製品ならではの解決策ですね。といいますのも、グラスのような単純な工業製品の場合、場所はとりますが時間がたっても品質自体の変化はほとんどありません。保管している最中に勝手に割れたりすることは稀ですし、おそらくA品もB品も同じ確率で割れることでしょう。
農産物はそうはいきません、なぜなら腐るから。売れるまでずっと取っておくにも限度があります。そうすると、結局「値下げして早くさばく」か「手をかけずに捨てる」というのが、一番「楽な」解決手段なのかなと思います。正しいとは思っていないんですけどね。
というわけで、とりとめのない考察になってしまいました。最後までお読みいただきありがとうございました。