「焼きいも」の栄養についてシリーズで書いています。今日は「ビタミンC」についてです。
いきなりですがおわび
前回の内容についておわびがあります。「サツマイモにはプロビタミンAが比較的多く含まれています」と書いたのですが、実はプロビタミンAは、焼きいもにすると減ってしまいます!
β-カロテン当量で比較すると、生いもでは100g当たり23μg(100万分の23グラム)あったものが、焼きいもにすると約4分の1、6μg(100万分の6グラム)まで減ってしまいます。
蒸した場合ですとβ-カロテン当量は減るどころか、26μg(100万分の26グラム)に増えますので、もしサツマイモからβ-カロテンを取りたい場合は、生もしくは蒸してお召し上がりいただいたほうが良いようです。
……これは、事実なのですが、これから書くビタミンCへの伏線でもあったりします。
本題:焼きいもに含まれるビタミンCについて
レモン○個分のビタミンC
さて、ビタミンCというと、必ず出てくるのが「レモン」ですよね。レモンには確かにビタミンCが多く含まれています(100グラムあたり100ミリグラム)。ただ、良くコマーシャルなどで流れる「レモン○個分」の時のレモンは20ミリグラムという基準だったそうです(※この基準「ビタミンC含有菓子の品質表示ガイドライン」(農林水産省)は2008年に廃止されましたが、全国清涼飲料連合会のガイドラインとして残っています)
それで、サツマイモのビタミンCですが、生の状態ですと100グラムあたり29ミリグラム含まれています。レモンで言うと約1.5個分ですね。
「ちょっと待った! ビタミンCは加熱すると壊れやすいって聞いたことがあるけど」という方のために、焼きいもに含まれるビタミンCの量も確認してみましょう。
焼きいもに含まれるビタミンCは100グラムあたり26ミリグラム。レモン約1.3個分のビタミンCになります。これは結構高い数字です。
ビタミンCはこんなビタミン
ビタミンCは物質としては「L-アスコルビン酸」という名前がついています。これに非常に似た物質に「D-アラボアスコルビン酸」または「エリソルビン酸」と呼ばれる物質があります。ちょっと詳しく書くと、この二つは「立体異性体」というものです。ただ、L-アスコルビン酸はビタミンCとして機能しますが、エリソルビン酸はビタミンCとしてはあまり機能しないんだそうです。
このビタミンC、実はグルコース(ブドウ糖)を原料に合成されます。詳しい方法は割愛します(私の手に負えない 笑)が、こんなところでグルコースが出てくるとは思いませんでした……
ん? ということは???
はい、動物の中には自分でビタミンCを生成できる種類がいます。というか、ほとんどの動物は体内でグルコースからビタミンCを生成できるそうです。
ところが、残念ながら人体はグルコースからビタミンCを生成できません。というわけで、食べ物などでビタミンCを補う必要があります。
ビタミンCが体内で果たす役割はとても大きく、特に人体を形作る「コラーゲン」というタンパク質の合成に関わったり、ビタミンEの再生にもかかわります。ビタミンCが不足すると「壊血病」という病気になってしまうということは、古くから知られています。
ビタミンCの弱点と焼きいも
ビタミンCは水溶性のビタミンです。なので、野菜を洗ったりする際に水に溶けて流れてしまいます。さらに、加熱すると分解しやすくなります。このため、パックに詰めて販売されている野菜ジュースは、加熱殺菌をしたあとでビタミンC添加しています。
では、焼きいもはなぜビタミンCが壊れない?
それは、サツマイモのデンプンが過熱することで柔らかく粘りが出てくること(「糊化:こか」といいます)と関係があります。糊化されたデンプンにビタミンCが包まれることで、壊れにくいと推測されています。
まとめ
- サツマイモに含まれるプロビタミンAは、焼きいもにすると大きく減ってしまう
- サツマイモに含まれるビタミンCはレモン1.5個分。焼きいもに含まれるビタミンCはレモン1.3個分である
- 多くの動物は体内でグルコースからビタミンCを合成できるが、人間は合成できない
- ビタミンCが不足すると壊血病になる
- ビタミンCは水溶性で熱に弱い
- 焼きいもの場合、糊化したデンプンにビタミンCが守られるため、生の状態からの減少量が少ない