と、私に限らず同業の先輩方も、「焼き芋は冷めても美味しい」と語られています。
「美味しい」にも色々な要素がありますが、焼きいもの美味しさというと、やはり「甘味」が大きな割合になるのではと思っています。
焼き芋に甘味がある秘密は、サツマイモに含まれる酵素にあります。
ここからちょっと科学の話になります。
サツマイモの主成分はデンプンですが、それ以外に「β(ベーター)アミラーゼ」という酵素が含まれていて、この酵素の働きでデンプンが麦芽糖に変化します。
酵素というのはタンパク質ですので、温度によってその活性が変化します。
左のグラフ*3を見てみると、
β-アミラーゼの活性は次のように温度変化します:
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- 60℃~65℃が最高
- 70℃になると急激に下がり、最高値から比べると約半分になる
- 60℃より低い場合は、比較的なだらかに減少して40℃くらいで半分になる
つぼ焼きいもをつぼから出したあとは芋の温度は少しずつ下がっていきますが、β-アミラーゼの活性がまだ生きている限り、冷めていく間もデンプンが麦芽糖に変わる化学反応は続いていきます。
ですので、焼きたてよりも少し冷ました方が甘みは増すことになります。
ちなみに、ジャガイモにはβ-アミラーゼは含まれていません。なので、焼いたりふかしたりしてもジャガイモは甘くはならないんですね。
*1:水飴の主成分は麦芽糖です
*2:品種によっては、蔗糖なども含まれています
*3:大西正健、岡田厳太郎、谷口肇、坂野好幸 「蛋白質 核酸 酵素」 Vol.30 No.5 pp.404-412 (1985)から引用